微積分を使って高校物理を学ぼうとするときに、一番困るのは、力学と電磁気について、市販の問題集の解答・解説と自分の解答が違う場合が多いという点だと思います。
疑問点が生じて解説を見ても、解説では公式に代入して解いていたりして、疑問点が解決できないのです。
微積分を使った解法でこれらの分野を解説してある問題集は、現在、ほとんど市販されていないので、ここでは、掲載されている問題の質・量などを中心に、おすすめの問題集を検討していきたいと思います。
●頻出問題を解けるようになるための問題集
大学受験の物理を学ぶ際に、まず、標準的で頻出な問題を解けるようになることが大切です。
これらの問題を確実に解けることができれば、ほとんどの私立大学・国立大学で合格点を取れるばかりではなく、難関大学でもボーダーラインあたりまでは得点することができます。
全分野について、基本解法をマスターして、それを自由に使いこなして、時間内に問題を解けるようになることをまずは目指しましょう。
このレベルに到達するためには、難問は必要ありません。
標準的な問題を、「なぜ、そう解かなければならないのか」ということに、心の底から納得して解けるようになることが重要です。
ところで、「標準的な問題」というのはどういう問題でしょうか。
予備校の「中堅レベルのコースで扱われている問題」が、それに相当します。
予備校に通っている人は、テキストの問題を中心にやるとよいでしょう。
問題集を使って、独学する場合は、以下の問題集が、「標準的な問題」を扱っています。
○良問の風(河合塾出版)
形式:簡単な基本事項の後に問題があり、別冊で解答・解説がある形式
問題数:136問。標準からやや難レベルの頻出問題が扱われています。
力学:運動の3つの公式を使って解いていく解法。力のモーメント・摩擦力の解説は詳しい。
波動:進行波や定常波は規則性を使った解法でよい。ドップラー効果は公式中心だが、問題を解く中で仕組みを説明している。干渉は光路差で計算しており分かりやすい。
電気:電場の説明は、図が多く分かりやすい。コンデンサー回路は電位を変数にとって、電荷保存則で問いていく解法がメイン。
磁気:電磁誘導は、vBlと、電磁誘導の法則で大きさ、レンツの法則で向きを決める解法の使い分け。電池とみなせ!など、解答のコツが詳しい。交流は暗記。
熱:p−Vグラフと仕事の関係は詳しい。状態方程式を立てて、比を取って計算するところがよい。
全体としては、扱っている問題は超オーソドックスな良問がそろっている。物理のエッセンス、名問の森の著者、浜島氏の問題集なので、今後の一番の売れ筋になりそう。
微積分を使っている場合、コンデンサー回路では、回路方程式(キルヒホッフの第2法則)を立てるので、解説と違ってしまい少しやりにくい。
○物理I・U基礎問題精講(旺文社)
形式:例題に対して、ポイントの説明と解説がある形式で、勉強しやすいです。
例題数:105問。標準からやや難レベルの頻出問題が扱われています。
力学:運動の3つの公式を使って解いていく解法
波動:定常波は規則性を使った解法。ドップラー効果は公式。干渉は位相差で説明してあり、やや分かりにくい。
電気:ガウスの定理を使った電場の説明がよい。コンデンサー回路は電位を変数にとって、電荷保存則で問いていく解法がメイン。
磁気:電磁誘導は、vBlと、電磁誘導の法則で大きさ、レンツの法則で向きを決める解法の使い分け。交流は暗記。
熱:p−Vグラフと仕事の関係は詳しい。状態方程式ではなくボイル・シャルルで解く。
全体としては、扱っている問題はオーソドックスな良問がそろっている。
解法は、上述のような特徴がある。微積分を使っている場合、コンデンサー回路では、回路方程式(キルヒホッフの第2法則)を立てるので、解説と違ってしまい少しやりにくい。
○物理I・U重要問題集(数研出版)
形式:簡単な基本事項の後、問題があり、別冊で解答・解説集がある形式。
問題数:146問。標準から難レベルの頻出問題が扱われています。
力学:運動の3つの公式を使って解いていく解法。ガリガリ計算していく感じで、あまり工夫が見られない。
波動:定常波は規則性を使った解法。ドップラー効果は公式。干渉は光路差で説明。
電気:コンデンサー回路は電位を変数にとって、電荷保存則で問いていく解法。
磁気:電磁誘導は、vBlと、電磁誘導の法則で大きさ、レンツの法則で向きを決める解法の使い分け。交流は暗記。
熱:状態方程式ではなくボイル・シャルルで解く。
扱っている問題は、難易度ごとに、A(標準 124題)、B(応用 22題)
必解:必ず解いて欲しい問題(84題)
U : 物理Uの範囲を含む問題
発展:教科書で扱っていない問題
と分類されているのですが、A問題の中にも難易度の高い問題が含まれていて、印がUだったりして、この分類が分かりにくいです。独学者が最初から解いていこうとすると使いにくいかもしれません。
扱っている問題は、面白い良問が多いので、授業などで解く問題を指定して利用したり、類題を探して解くといった使い方に向いていると思います。
解法は、上述のような特徴がある。微積分を使っている場合、コンデンサー回路では、回路方程式(キルヒホッフの第2法則)を立てるので、解説と違ってしまい少しやりにくい。