■法則が多すぎて自然が分からないのです!
実験から得られたデータから規則性を見抜いて法則を発見することで、無限の存在である自然が、いくつかの数式へとまとめることができたところまで、前号でお話しました。
でも、みなさんは、例えば、400個の法則を見せられて、「無限個に比べたら、400個なんてほんのちょっとだろ!」と言われても、「なるほど!自然が分かった!」と感動できますか?
自然を理解するというのが、どのようなストーリーになっているのかを、たとえ話で追いかけてみましょう。
では、たとえ話モード突入!
●「△学入門」
ある国がありました。
その国では、「△学」という学問があって、高校生は必ず△学を学ばなければなりません。
高校に入学すると、100ページからなる教科書が渡されます。
「△学」で60点以上取らなくては、高校を卒業できません。
教科書には、
●+△=■
◎×■=〇
▲−◎=△
‥‥‥
というような〇とか△とかの式が、400個も並んでいます。
中間テストや期末テストでは、
〔 問題 ◎+■= 〕
というような問題が出題され、20問中12問以上正解しなくては赤点です。
ほとんどの高校生は、△学が大嫌いです。
△学が何を表しているのか、何を目的として作られたのか、
なぜ、◎×■=〇になるのか、などが全く分からないからです。
でも、高校を卒業しなくてはならないので、試験前になると、みんな、
試験範囲の20問をすべて暗記します。
それが、苦痛です。
いやいや、暗記します。
だから嫌いになります。
卒業試験では、400問全てが出題されます。そのうち、240問以上正解しなければ、卒業できません。
高3の2月は、必死で暗記します。
学年で4人がくらいが、毎年、留年します。
これが△学です。
高3の山田君に△学について聞いてみました。
田原:山田君はなぜ、成績が2になってしまったのですか?
山田:△学はつまらないからやる気がしません。ただの丸暗記は苦痛です。
ここで、山田君がキレます。
山田:なんで、こんな意味不明な式を丸暗記しなくてはならないのですか?
なんで、僕は何のために、これを勉強しているんですか。
高校を卒業したら、絶対に△学の教科書を燃やしてやります。
僕は、山田君に△学の目的を話すことにしました。
田原:△学というのは、人間が自然を理解するために作った知恵の結晶なんだ。
でも、自然は無限に広いのに、人間の脳細胞はたかだか数兆個程度しかない。
だから、まともに理解しようとしても無理なんだね。
だから、「理解した!」という気持ちになるには、
無限を有限に圧縮する工夫が必要なんだ。
こうして作られたのが、法則という数式なんだ。
教科書に載っている
◎×■=〇
のような式が、その法則なんだよ。
だから、△学の教科書は、「無限の自然を、たった400個の式にまとめました!」というすごい本なんだ。
山田:無限個に比べれば、400個は確かに小さい数かもしれませんが、僕の暗記能力からすれば、まだまだ、大きすぎます。
田原:ところが、この400個の法則は、バラバラなものではなくて、互いに関係があるんだ。
400個の法則を、一つにまとめた式が、教科書の1ページ目に載っている
●+△=■
という式なんだ。だから、結局、自然現象をこの式一つにまとめることができたんだ。
山田:え?1個の式で、僕たちが住んでいるこの自然現象の全てが表されているんですか?
田原:そうなんだ。自然現象の全ては、この出発点の式「●+△=■」に折りたたまれているんだ。だから、それを、必要に応じて、399個の式へ展開する方法を身につければ、自然現象を、自由自在に予想することもできるんだよ。
山田:僕、ちょっと、感動しています。△学がそんなにすごいものだったなんて。。。
田原:出発点の式「●+△=■」は、法則の法則なんだ。このような式を「原理」というよ。
僕は、この原理の式1つを眺めながら、ときどきつぶやくんだ。
「自然ってこうなってるんだ。。」
山田:僕にも自然を理解できそうな気がしてきました。
●終了
実験データから規則を発見して数式にまとめたのが法則。
これは、沢山あります。
法則の間の関係を調べ、それらの法則を導くことができるような、根本の式が原理。
これは、力学なら運動方程式、電磁気ならマクスウェル方程式(大学で習います)のように、各分野で1つ存在します。
これらの原理をさらにまとめていって、1つの式で表したい!というのが大統一理論という取り組みです。
物理というのは、このようにして、「1つにまとめて、究極の原理を探る」というやり方で、自然を理解しようとしているのです。