究極の「先割れスプーン」探し!(たとえ話)

物理ネット予備校

 物理と数学の違いって何だと思いますか?

 ん? いきなり数学の話? 数学はきらいだな!

 と思った皆さん。ちょっと待ってくださいね。

 この違いは、大切なポイントなのです。

 これに気づいていないために、物理が理解できない人がたくさんいるんです。

 はっきり言って、全く違います。

 その違いを感じてもらうために、早速、今から、たとえ話をしますね。

 それでは、たとえ話モード突入!

●たとえ話(第1話)「究極の先割れスプーン」を探して!●

 ある町に、「ラ・マセマ」というおしゃれなレストランと、「富士楠(フジクス)食堂」という古い定食屋がありました。

 M君とP君は、この町で食事をとることにしました。


 M君は、「ラ・マセマ」に入り、コース料理を注文しました。

 テーブルの上には、たくさんの食器が用意されていました。

 ナイフやフォークはもちろんのこと、らせん状に渦を巻いた見たこともない食器もあります。

 席につくと、ウェイターがこう言いました。

 「料理に合わせて、使いやすい食器を選んで食べてください。」

 M君は、フォークを選んで、前菜のサラダを食べました。

 料理が次々と運ばれてきます。M君は、その度に、使いやすそうな食器を選びます。

 メイン料理はエスカルゴでした。M君は「もしや?」と思い、「らせん状に渦を巻いた食器」を試してみました。

 その食器は、殻にピッタリと合い、上手に食べることができました。

 予想が的中したM君は、楽しい気分になりました。


 一方、P君は「富士楠食堂」に入りました。

 店に入るなり、店の主人は次のように言いました。

 「最初に一本の食器を選んでください。今後、ウチで料理を食べるときには、その食器だけしか使えませんので、よくお考えになって選んでくださいね。」

 P君は、ライスも、スープも、麺も食べられるように「先割れスプーン」を選びました。

 その後、P君は、「富士楠食堂」の常連になりました。

 毎日、自分専用の「先割れスプーン」を持って通います。

 P君が今日注文したのは、エスカルゴです。

 彼は迷わずマイ「先割れスプーン」を使って、エスカルゴを食べました。


 何年か後、1000種類の料理を食べ終えたP君は、自分の先割れスプーンを見ながらつぶやきました。

 「食べるっていうのは、こういうことなんだなー。」

 というのも、1000種類の料理を例外なく食べることのできた先割れスプーンに、「食べる」という行為の本質が写し取られているような気がしたのです。

 そして、おそらく、これから注文するであろう料理も、この「先割れスプーン」で食べることができるはずだと、感じられたのです。

 1000種類の料理を食べきった自信がそう思わせたのです。

●●たとえ話終了●● 

 数学と物理の違いは分かったでしょうか?

 これだけでは、まだ、分かりませんよね(←自分ツッコミ)


 数学では、誰もが自由にいろいろと便利な道具を作ることが許されています。

 ベクトルも行列も複素数も、かつて数学者が勝手に作った道具なんです。

 そして、道具にはそれぞれ長所と短所があります。

 問題に応じて、適した道具を選び、解決することを目指します。
 
 これは、たくさんの食器の中から、適したものを選んで、料理を食べるようなものです。

 この場合、最適な方法が一つだけとは限らず、別解はたくさん存在します。

 たくさんの道具の特徴をつかみ、使い分けができるようになるのが数学の学習法だと僕は思います。


 ところが、物理は違います。

 たった一つの数式で、ありとあらゆる自然現象を説明することを目指します。

 他の道具など目に入りません。自分が手にしている数式で、どんな自然現象も例外なく説明できるかどうかだけがすべてです。

 これは、先割れスプーン1つで、いろいろな料理を食べていくのと同じようなことです。

 そして、十分たくさんの現象(問題)を、その数式一つだけから説明できたとき、その式を眺めながら、こうつぶやくのです。

 「自然現象というのは、こういうものなのだなあー。」


 ■力学の「先割れスプーン」は、運動方程式

 力学における「先割れスプーン」が、運動方程式です。

 つまり、すべての力学現象を運動方程式一つで説明します。

 入試問題でいうなら、すべての問題を運動方程式(または、そこから導かれる法則)で解きます。

 学習の目的は、「目の前の問題を解く」ことではありません。

 大学に合格することでもありません。(こんなこと言っていいのか?)

 100題以上の問題を、運動方程式1つから解いた後に、この式を見ながらこうつぶやきたいのです。
 
 「自然ってのは、こういうものなんだなあー。」

 こうつぶやいた人は、決して、解法を迷いません。

 だって、一つしか解法を持っていないんですから。

 運動方程式と心中です。


 皆さんに質問します。

 目の前に、とても難しい力学の問題があります。どうやって解きますか?

 僕は、もちろん、手垢にまみれた運動方程式をポケットから取り出して、これまで何百回とくり返してきたことを、もう一回、くり返すだけです。

 
 みなさん、「物理の気持ち」、田原訳で伝わりましたか?



<< メールマガジンへ登録 | TOP | ある遺跡の暗号(たとえ話) >>

関連エントリー
家族対抗!回転すし早食い大会 (たとえ話) 過酷なパン工場のアルバイト (たとえ話) △学入門(たとえ話) ある遺跡の暗号(たとえ話) 究極の「先割れスプーン」探し!(たとえ話)
(c)物理ネット予備校
Designed by seo